課題2-1の講評
匿名性が守られるべきかどうかの立場は次のとおりでした:
- 守られるべき: 51%
- 規制されるべき: 43%
- 立場不明: 6%
このような課題では、どちらかの立場に偏ることが多いのですが、ほぼ二分されていたのは面白いことです。
どのような通信手段にでも、匿名性が有益な場合と有害な場合がありますので、どちらの立場が正しいということはありません。ただ、「情報処理」を学ぶ上で大事なことは、どちらの立場をとるかではなく、匿名性やそれを規制することの利害をよく理解することです。その意味では、利害得失について他の人がどのような意見を持っているかに気を付けて交換したレポートを読んでみて下さい。
またこの先の講義でも触れますが「情報処理」の授業の立場から重要なことは、情報技術によってこれまでの社会が前提としてきた匿名性が変化しているという点です。特に
- 情報技術は匿名の「害」の拡大を助長する---従来からある匿名の通信手段(例えば電話や郵便)にも、迷惑電話・いやがらせ等の問題は色々とありました。情報技術は、そういった害のある情報通信も容易にします。従来の通信手段では、たとえ匿名で問題ある行為ができたとしても、それなりの費用や手間がかかっていました。しかし情報技術は問題のある通信を含めて、情報伝達の費用や手間を大幅に減らします。結果として従来は起こり得なかったような問題が起き得ることは注意する必要があります。
- 情報技術は実名の強制を容易にする---例えば、公衆電話をかけたり郵便ポストに投函するのに身分証明書を見せる必要はありません。この理由の1つは、身元確認の手間が大きいから例え規制したくても規則できないというものがあります。しかし、情報技術は身元確認も容易にする可能性もあります。容易に規制が可能になったら、公衆電話やポストさえも身元を明かさないと使えなくなるかも知れません。
感想等(順不同):
Hidehiko Masuhara, May 2005